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平井堅はもしかしたらドラえもんを共依存の話として見てるのかもしれないと思った話

音楽

ミュージックステーション。見ましたか。いやぁよかったですねえ。何がよかったってそりゃオザケンです。ワイプでも往年のすべてを見下したような表情を全く崩さない王子様。最高ですね。新曲も最高ですね。微妙に見切れてるよくわからないダンサーは何なんだと思ったらパーカッション担当なんですね。Hey-say-Jump!あたりをお目当てに見に来た女の子たちは誰だこのおじさんと思ったんでしょうけどオザケンオザケンなのです。相変わらずオザケンすぎて最高でした。オザケンの前にオザケンなし、オザケンの後にオザケンなしと歌われたオザケンぷりでした。VTRに出てきたブギーバックを歌うYONCEをふふんと笑う様子はまさにシティポップ界のラスボスとしてふさわしい姿でしたね。


さてオザケンが出た瞬間twitterのトレンドはオザケンになりこの文章もゲシュタルト崩壊するほどオザケンを連呼しています。そんなオザケンは人間だけでなくネコ型ロボットにまで見下した表情を崩しませんでした。最高ですね。タモリさんに言及することを忘れた哀れなネコ型ロボット、その名はドラえもんです。テレビ朝日を背負うネコ型ロボット。スタジオにいたのはペッパー君のごとく聡明なネコ型ロボットでなく水田わさびさんの声を当てられた哀れな着ぐるみだからタモリさんに触れるのを忘れてしまったのでしょう。そんなドラえもんがなぜMステにいたのか。番宣です。正確には映画の宣伝ですが。テレビ朝日非実在ネコ型ロボットの映画で何億円をも稼ぎそれに社運をかけているのです。そのためタモリさんに言及することを忘れてもMステの場にいることが許されたのです。なんて恐ろしいネコ型ロボットなのでしょうか……。

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さて、そんなタイアップ枠で登場したのが平井堅です。ドラえもんの映画主題歌を担当されるとのこと。ネオ作務衣と言わんばかりの服装を身をまとい、ピアノと織田信成さん、浅田舞さんのダンスを添えてしっとりとしたバラード「僕の心をつくってよ」を披露されました。


youtu.be

「僕の心をつくってよ」のMV。これもこれで衝撃作なのですがMステのパフォーマンス準拠で語ります。


「僕の心をつくってよ」、タイトルからして印象に残るパンチラインですしメロディも内容も「ファミリーで見に行って感動して泣ける」近年のドラえもん映画にぴったりな素晴らしい曲です。クライアントのニーズに合わせたといった意味でも文句なしですし、ドラえもん抜きでも純粋にいい曲です。Mステのパフォーマンスもさすがとしか言いようがありませんでした。しかし歌詞を見ながら、この曲実は半端ない「闇」を抱えているのではないか……と邪推してしまいました。「闇」なんて陳腐な言葉あまり使いたくはないのですが、この曲をただの「家族で安心して見れる感動アニメの主題歌」として聞いていいのかと。平井堅はもしかしたら万人受けする感動の裏に、スパイスを効かせているのではないかと思ったのです。


さて問題の「僕の心をつくってよ」のサビです。

ねぇ 君のずるさを晒してよ
ねぇ 僕のダメさを叱ってよ
これからも この先も 僕の心を作ってよ


これはのび太視点の詩になってますね。ドラえもんのび太の関係性がよく表されてる。最後に歌詞のタイトルを入れ効果的なフックを形成しています。サビは以下のように続きます。

ねぇ 君が笑うと弾むんだ
ねぇ 君が泣いたら痛いんだ
君だけが 君だけが 僕の心を作るんだ


これはドラえもん視点の詩になってますね。のび太とともに泣き、笑うドラえもんが描写されてます。「友情は喜びを二倍にし、悲しみを半分にする」を超え悲しみをも自分のものとして受け止める関係性が描写されています。のび太視点の「僕の心を作ってよ」はドラえもんを導き手として見ているジュブナイル要素を持った言葉です。対してドラえもん視点の「僕の心を作ってよ」は、量産型ネコ型ロボット(不良品)だけど君との日常で思い出を重ねていきたい、唯一無二の存在になりたいといったSFロマン的な要素を持った言葉になっている。素晴らしいダブルミーニングです。


しかしこの曲を聞いて「不穏だ……」と感じたのはこの「僕の心を作ってよ」というパンチラインの重さです。とくにドラパートの「君だけが 僕の心を作るんだ」です。確かにドラえもんのび太ドラえもんの関係性を軸にした物語だからのび太「だけ」がドラの心を作る、でいいのかもしれません。この曲は「君」と「僕」の強固な絆が描かれドラを超えて素晴らしい曲なのですが、AメロBメロの歌詞も含めて読むとすごく不穏に聞こえる。具体的にどう聞こえるのかというと、共依存に聞こえるのです。


Aメロでは「君」との出会いで「僕」がアイデンティティを獲得する様子が描写されています。他の人といても「僕」じゃない気がする僕。そんなの「僕」を「君」だけは見つけてくれたのです。この時点で第三者はシャットアウトされ、濃密な「君」と「僕」の世界が確立されます。

そして次のBメロで

傷つく一緒と 傷つかないひとり
君となら 傷ついてもいいかな


と続きます。感受性を殺し孤高の人として生きるよりも君とともに傷つき思い出を作って生きていきたいということでしょうか。傷つくのはつらいけど、君と一緒に生きるのなら傷つくこともできるといった風にもとれます。君と一緒なら、人間性を手に入れ社会に参画できるとも取れます。


ここでMステでは浅田さんと織田さんが背中合わせで立ち上がっていました。私はこの振付に鳥肌が立ちました。一人だと体育座りしてしまうけど、二人だと立ち上がれる。ポンコツとポンコツでも二人支えあえば立ち上がれる。人という字は云々じゃありませんけど。感動的です。ただ、裏を返せば「君」がいないと一人で、「君」がいないと傷つくこともできないのです。ちなみにこの背中合わせのメタファーは大サビのこのフレーズへつながって行きます。


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ねぇ 君の弱さを晒してよ
ねぇ 僕の強さを信じてよ
これからも この先も 僕の心を作ってよ


のび太が孤高の機械になりそうなドラに対し「僕の強さを信じて」と語りかけているのです。のび太の成長が描かれます。そして「僕」の心を作るのを懇願している。いくらお約束とはいえネタバレしてる感満載ですね。


最初は導き手と弟子であったのび太とドラの関係性が対等な友人になり、ついに逆転する。しかし二人とも相手に「僕の心を作ってほしい」のです。ドラはのび太の存在によって自らの立ち位置や「心」を獲得している。この曲のドラはのび太(との関係性・思い出)抜きでは社会性のないただのネコ型ロボットとなってしまうのです。一方のび太は自分を見つけてくれる、アイデンティティを教えてくれるのはドラしかいないと思っているのです。互いの存在が互いのアイデンティティ確立に不可欠なのです。これを共依存と呼ばずして何と呼ぶ。


そんな深ーいテーマを国民的アニメの主題歌としてお茶の間に流す平井堅は流石だなーと思いました。これは友情の歌ともとれるしラブソングとしても聞ける。ドラを超えたニーズを掴まえられる。そんな歌にこんなテーマを込めるなんて。正直、舌を巻きました。国民的アニメをこんな風に解釈しスポンサー枠でMステで出演。この日のMステで一番ロックだったのはもしかして平井堅だったのかもしれません。


正直、詩の解釈というのは正解がないので何とも言えませんが。あくまでも個人の解釈なので平井堅はそんなこと思っていないかもしれません。ただ詩って人によって取り方が幾様にも変わる。だから楽しいんですけどね。と逃げたところでお開きにしようと思います。


ヒライけんさんのCDはこちら。正直言ってジャケのヒライさんが寺田創一さんにしか見えない。


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