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呼び起こす会話 音楽やアート

2017年よかったライブ3選

今年色んなライブに足を運びました、と言ってもテクノポップ系がほとんどで、しかもご贔屓(アラ還)が半分を占めますが。締めくくりとして、良かったライブについてつらつら書いてみます。こんな人間が書いているのでセカオワアムロもケンドリックラマーも出てきませんが、へなちょこなりに楽しんで頂ければ幸いです。

 

おしながき

  

 

5/28 O.L.H.(a.k.a.面影ラッキーホール)創立25周年大感謝祭~四半世紀の風雲ながれ旅 @渋谷クワトロ

しょっぱなからサブカルと下品の極みみたいなバンドを出してしまいました。すみません。ずっと行ってみたかったO.L.H.のライブ。しかしwikiに「元々のライブ嫌いに重なり」まで書いてある彼らです。「曲にフリがあっておもしろい」「OAに変な紙芝居作家が出て来て変な空気になった」などそそられる話もフォロワー氏から聞き行きたみが高まっていきました。ついに2017年5月、彼らのライブに足を運ぶことになったのです。

 

O.L.Hの春画Tを着た妙齢の男女が渋谷クアトロに集います。たまにしか活動していないのに(から?)満員で驚きました。(と言ってもフロアには机が置かれてましたが)OAはこまどり姉妹。平成生まれ平成育ちの私でさえ「これはやべぇ組合わせだ」というのはアー写から理解できました。この前戯が最高だった!ライブハウスに演歌が流れる風景が痛快なわけないでしょう。しかし芸歴50年の渡り鳥、歌詞が飛ぶ、化粧に何時間もかかる、いつのまにか独身……といった絶妙な老人自虐MCで笑いをかっさらって行きます。「どうやらここのバンドマスターさんが私たちのファンみたいで、お招きにあずかりありがとうございます」と語る姿のキュートなことよ。OAって「イエーイ(チッ最近活動してねぇから時間稼ぎしやがって、早く出ろよ)」という空気が流れている気がするのですが、(偏見です)かわいらしいおばあちゃまの、プロの技を30分で(それ以上やるともう灰になるようです)見せつけられました。恐れ入ります。「最新作なんですが、聞いてください」「間違えないかしら」といったMCの後、ラーメン渡り鳥に手拍子を打った、あの暖かい空間を一生忘れることはできないでしょう。あれ以上芸達者なOAを私は知りません。

  

こまどりのラーメン渡り鳥

こまどりのラーメン渡り鳥

 

 

肝心かなめのO.L.H.。下品オブ下品で最高でしたね。「下品なクレイジーケンバンド」という表現がぴったりなファンクノワールです。ビッグバンドどコーラス3人という大所帯をバックにaCKy氏はシモ事情を切々と歌い上げます。最近の曲で仕事してますPRをしたのち、AVの二重買いや性病、といった曲と大して変わらないMC。お客さんから黄色い声が上がると「お前と俺の間には深くて黒い溝があるんだよ」と客席から言い放ったaCKy氏にえもいえない味を感じました。後半は怒涛の名曲攻め。「パチンコ行ってる間に娘を死なせた…夏」は不謹慎ながらパチンコを回すフリが楽しい。「今夜巣鴨で」のイントロが流れた瞬間、お前コレが欲しかったんだろう?と言わんばかりの空気を感じました。ええ欲しかったです。「俺のせいで甲子園に行けなかった」で最高潮を迎え閉幕。aCKy氏は最後ピンクのスーツを脱ぎ捨て中年太りした腹を晒しパン1になっていました。山手線の左のほうで聞くファンク・ノワール、最高でした。

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8/13 DOTAMA×松永天馬「ディスり過ぎてごめんなさい。謝罪会見ツアー」@渋谷WWW

サブカル女子ホイホイなクソメガネの2マン。「ダンジョン」見てるとDOTAMA一生懸命なんだなぁ……といたたまれない気持ちになって応援したくなっちゃう。人を応援させる一途さがあってほんとしんどい。ちょうどモンスター交代期だったので、音楽家として新たな1ページを刻むその時を見ようと足を運びました。

 

DOTAMA氏は対バンのチョイスが絶妙だなぁと感心します。天馬さんを選んでくれたのはニューウェイブのオタクとして嬉しかった。HIPHOPニューウェイブも社会に対しての「居心地の悪さ」を表明する、アイデア勝負の音楽だと思っているのでもっと交流してくれないかな……と常々思ってます。アーバンギャルドはGOMESSさんともイベントやって共作したり、一番文系HIPHOPに近いニューウェイブだと思います*1

 

 

松永さんは詩人を探すアンテナが鋭いのかな。ダンジョンに注目してたV系ライター、まつおか千秋さんが対談記事をオーガナイズしてくれたのも嬉しかった!良い記事なのでぜひ読んで!!

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松永天馬さん。正直に言うと。中途半端に知ってる分アーバンギャルドのことは小馬鹿にしてたんですけど(すみません)、すごくよかったです。悔しいけど。アーバンもですがすごくコンセプチュアル。その「狙ってる感」がイマイチアーバンを好きになれない理由でもありました*2。しかし曲がSPANK HAPPYみたいな大人のポップスでおしゃれなんだな~~!!!!

 

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おおくぼけい様のシンセにアーバン・ダンスのステッカーが貼ってあってにっこり。5月のアーバン・ダンス×中野テルヲのライブでゲストだったけい様、セッティングで、ピンクのケープを羽織った右肩に手を当てている姿に目が釘付け。華憐でいいお仕事をなさる……!そんなけい様が黒一色をまとい美少年に戻っていたのも印象的。「いま、最も気持ち悪い男」のコンセプト通り松永さんは偏執狂で気持ち悪いのですが、その「ズレ」がどこか笑いも誘います。都市の孤独、男の悲しみ、エロスとパトスを喪服に包まれた体で歌います。一曲終わるごとに「ご愁傷さまです」と言い放つ松永氏。彼は最後まで「松永天馬」を演じきっていました。松永天馬が一瞬たりとも松永天馬でなくなる瞬間がなかった……!

 

あとO.L.H.の「好きな男の名前腕にコンパスで書いた」聞いて嬉しかった。前述のライブを思い出してしみじみ。本家の「コンパス」は男に頼らなきゃ生きていけないけど気を惹くのも下手な、頭が足りない田舎の女の子の哀しみ、ってイメージだけど、松永版の「コンパス」は存在意義が男に依存してて執着する、SNSリスカ跡を晒すシティメンヘラガールの趣がありました。最後は「 身体と歌だけの関係」を合唱し「歌だけが残る」と皆で歌う光景は壮観でした。松永さんは本当にカバー曲を換骨奪胎するのが上手!現代的に味付けして、自分の世界観に組み込むのがうまいんです。

 

後攻DOTAMAさん。最初は相方DJ-YUTAさんのルーティーンからスタート。DOTAMAさんもコンセプトガチガチな曲をやられるのですが*3楽曲のテーマは「テーマ」でDOTAMAここにありって幕開けでした。「リストラクション」でマシンガンをぶっ放す様子が楽しそう。ツアーファイナルでヤケクソぶっ壊れ気味にぶっぱなしながらMCではどこかとぼけた味を出してたのがキュート。「ぼくの曲はまともなサビとかそういう構成はないんだけど……松永さんもそうだね」と松永さんに言及する場面も。松永さんもガッツリDOTAMAさんに言及してて、お互いのリスペクトが伝わってきました。「意味のない対バン」が好きじゃないんですけど*4この二人はほんと意味のある対バンなんだなぁってしみじみしたし嬉しかった。Twitterで「松永天馬ファンがDOTAMAをみたことも、DOTAMAファンが松永天馬を見たことも嬉しい」というツイートを見てマジそれな!となりましたね。

 

客席も暖かかった。一番笑ったのはお題フリースタイルで全部お題言ってたのに、「う○こ」を忘れたと勘違いして「う○こうん○う○こ!!!!!」と絶叫して「これでチャラにして」と言ったとこですね。客席から「言ってたよ」と指摘されてやけっぱちになるDOTAMAさんとてもよかったです。アンコのあと、中々帰らないお客さんがBGMのMonster VisionのDOTAMAヴァースを大合唱してたのはすごくエモかった。「どったん、一生懸命がんばってよかったね……報われたね、愛されてるね……」としみじみしてしまいました。ラフな格好で戻ってきたDOTAMAさんが「9時半までで取ってたから時間どうしよう……」と慌てつつも感謝のフリースタイルやってる景色もエモかった。演者と客のテンションが一致した、エモい空間を見せてもらってグッときました。終演後DOTAMAさんファンが松永さんのCDを買って列になってる景色もよかった……!ひさびさにいいライブといい景色を見させてもらいました。

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10/9 平沢進「第九曼荼羅東京公演 2日目」@新木場スタジオコースト 

かれこれ平沢進ファン歴も5年ほどになりました。ここ数年はライブも多く、数年ぶりにFCイベをやったり、対バンやゲストでお呼ばれしたりと「孤高のカリスマ」から軟化した平沢進おじいちゃん。長年ファンをやってると色んなことに目がついちゃうのは世の常で、音楽には関係ないとこの発言でモヤモヤすることもありました。FCイベのトーク「何もしてなきゃつまらないおじさんなんです」と自己評価してたのが印象的。変態音楽の巨匠、平沢進も普通のちょっとズレてる60代のおじいちゃんなんだなぁと良くも悪くも感じる機会が多くなりました*5

 

そんな平沢進に対し多くのファンが望むことは「またバンドやってくれ」です。平沢進はソロ一本化してから全部自分でやる。それはそれでいいのですがバンドをする平沢進が見たい。できれば生楽器使ってくれると嬉しい。そんな平沢進P-MODEL時代の盟友、千手観音こと上領亘とライブをやる……!平沢進(63)がよくわかんない覆面マスク男×2と凄腕ドラマーを従えバンド形式でスタジオコーストでライブやるんだよ。やべぇよ。ここ最近はライブ頻度も上がり平沢さんを下手に見すぎるとありがたみが減るかな……どうせ東京行くし……と思って大阪公演はいかなかったのですが(十数年ぶりに大阪公演をやった)、終演後のTLを見て「ちくしょおおおおおおおおおお」となりました。それでも直前まではそろそろ平沢さんかーくらいの気持ちでしたが。

 

もうとにかく圧巻でした。平沢進はマジエンターテイナーだしパフォーマーだしウン十年やってるだけのものはあります。一番ビビったのは「パラネシアン・サークル」で座ってアコギ弾いてスポットライト浴びてる姿。40年近く音楽家やってこの人がこういう風に自分を演出したことが未だかつてあっただろうか?(いや、ない)となりました。「サイボーグ」で、老若男女テンションぶちあがるさまは圧巻でした。満員のスタジオコーストを80年代の曲でジャックできる音楽家いるかよ……。

 

平沢進に関してはいろいろあっても。ステージのカッコいい姿見せられると「ヒラサワーーーー!!!!しゅきーーーー!!!!!」しか言えなくなります。板の上でイカサマすれすれハッタリかましてカリスマをやってる平沢が好きです。詐欺師と紙一重のエンターテイナー、平沢進が好きです。何もしてなきゃつまらないおじさんの平沢さんが、音楽とよくわかんないメカと歌声と、ファンを巻き込んで「地球最後のカリスマ・平沢進」をやっている姿が好きだと改めて実感しました。最高のイカサマインチキオペラを見せられた気分です。これからも鮮やかなイカサマをたくさん見せてほしいなと思う次第です。

 

物販を身にまとった平沢進はここで見れるぞ!

www.ikebe-gakki.com

*1:松永さんと志人が出たウエノポエトリカンジャムに行けなかったの本当に後悔してる。

*2:浜崎容子嬢のソロはすごく好き。成田忍さん経由で知ったAngel suffocationのおかげで菊池成孔氏を知った。

*3:そこがいまいちドタギャになれない理由でもある

*4:主催者側の思惑でテキトーに組まされてテキトーに社交辞令言うやつ

*5:平沢さんのインターネットではしゃいでるジジイ丸出しなツイートも結構好きですが。