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呼び起こす会話 音楽やアート

大相撲がしんどい

 

こんなタイトルのエントリを書きたいと思う日が来てほしくなかった。しかしいまの私はこれを書かないと気が済まないから書くことにする。ただのいちファンとして。

 

 「稀勢の里がしんどい」でも書いたが、もう相撲に関してはどこか冷めてしまったところがある。twitterでRTはするが自分からはつぶやかない。実況ツイの頻度も減った。リアタイ視聴、巡業へ、チケットが取れない本場所への執着も失せた。それは相撲報道への失望やファン層の変化、改善が見えない運営(日本相撲協会)への諦めが原因だった*1。大相撲はファンが多いので「私が財布を開けて/手紙を書いて支えなきゃ」という気持ちにもならない*2

 

貴ノ岩関の診断書を見た瞬間、悪い予感がした。ただならぬ病名にTLがざわついた。日馬富士関の暴行なんて信じられなかった。いわゆる昔気質の荒っぽい、粗野で無頼というイメージから一番遠いとこにいる関取だったからだ。ただ彼が手を挙げたことが徐々に否定できなくなった。静かに、ああ、認めようと思った。


報道が過熱するなか九州場所は不気味なくらい通常通りに行われた。むしろこのような状況だから普段通り行われたのかもしれない。不祥事ばかりで不満ばかりなのになんで大相撲のオタクやっているんだろうなと思った。しかし相撲を見れば分かることで、相撲は超!!!!!エキサイティン!!!!!!!!なのだ。力自慢の男と男が何かをかけて戦うから当たり前だ。単純に格闘技*3を見れば血沸き肉躍るのだ。やっぱ相撲は超エキサイティンだから相撲のオタクやめられねぇんだろうなと再確認した。大相撲というコンテンツはさすがウン百年続いてるだけあって面白いのだ。

 

超!!!!!エキサイティン!!!!!!な場所が終わり操作に関する報道がワイドショーを賑わせた。もうやめてくれと思った。千秋楽パーティーまで子細に報道され白鵬が歌った歌がなんだの報道された。千秋楽パーティーのカラオケなんていつもやってるもんじゃねぇかよヴォケと思った。

 

様々な報道が錯綜し、様々な言説や憶測がテレビでも雑誌でもネットでも入り乱れる。今もだ。対立構図が生まれ、○○派か、誰支持か、誰が「正しい」のかだけに話が集中する。しまいには本筋からズレたことまで叩かれ報道される。もういい加減にしてと思った。人々の暇つぶしなのはわかっている。確かに協会員同士の微妙な力関係を邪推し消費することもあった。邪推が面白いのは分かる。細かいどうでもいいことや噂やゴシップなんかより、事実関係だけを淡々と知らせてくれと思った。頭の中で何度も「素人は黙っとれ」の画像が流れた。

 

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なんも分かってねえよヴォケ!!!!とテレビを見ると思う。twitterを見ても思う。私も私で今回の事件については意見がある。それと合わないファンの人もいる。意見を言いたくてたまらなかった。ただここで、いちファンのヨカタに過ぎない私が言ってしまうと、それも「素人は黙っとれ」になってしまう。玉ノ井部屋床山さんがTV報道やコメンテーターに苦言を呈すツイートをしていた*4。所詮ファンだって詳しいことや真実は知れないし、「知りもしないのに外野で適当なコメントしている人」に変わらないのだ。ミイラ取りがミイラになってたまるかと思い、twitterに鍵をかけた。

 

 

それでもそれでも、違う、そうじゃないと言いたくなってしまう。それは私が解釈厨で、自分の解釈に自信を持ってて、そこからズレた考察を見ると訂正したくてたまらないからだ。少なくとも全く相撲見てない人よりは解釈には自信がある。ただ判官贔屓推しバイアスがあるから自分だって偏った視点なのは百も承知だ。どうせ人間みな誰もが偏っているのだ。

 

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こんなにしんどい思いになるコンテンツ他にあるかよ。運営がクソとかコンテンツそのものの劣化とかじゃなく、報道とか第三者のせいでなんでこんな苦しまなきゃいけねぇんだよ。ふざけんなよ。ただ不祥事が起きた、対応して処置しました、これからはここを改善して頑張りましょうの話になんで収まんないんだよ。報道や人の悪気ない言説に心を荒らし、違う解釈のファンを見てうっ……となる*5。でも自分の解釈を言うと、心を荒らした人たちと同じになってしまう。好きなコンテンツのオタクとして、相撲と相撲ファンのため今は何をして、何を思い、何を書けばいいのだろうか。わからない。ただただ、大相撲がしんどい。

 

*1:これは前エントリ 「巡業、休場、相撲協会マーケティングの限界」にも書いた。

*2:手紙を書いて~に関しては、私の最推しこと稀勢の里関があまりにも多くの人に愛され、今さら気持ちをぶつけても大して変わんねーよな、そもそも多くの人から寄せられる思いが重すぎるのではと思っているのもあるが。

*3:と言い切れないところに相撲の魅力があるが便宜上言わせてもらう

*4:下記ツイートがそれだが、「ジャージ騒動」がきっかけでツイートしたもの。モンゴル出身力士が、巡業でジャージを着るなんてけしからんと報道されたが、外国人力士が皆無だった昔からよくあることだった。

*5:自ら地雷踏んでアホかという気持ちも分かる、しかし否が応でも入ってしまう。ヴォルテール理論は適用したいと思ってるが

巡業、休場、相撲協会マーケティングの限界

今場所は3横綱2大関が休場している(2017/09/22 時点) 。平幕でも宇良が休場(碧山・佐田の海が途中出場)。多くの力士が休んでいる。異常事態だ。

 
なぜ多くの力士が休場しているのか。こちらの記事を見てほしい。記者の主張は私の意見に近い。これから先の文章は補足。

www.itmedia.co.jp


ざっくりまとめれば、巡業の過密日程、不祥事以降の「ガチ」を求める空気がきっかけで本場所で怪我する力士が増えているという話だ。

 

地方巡業については色々思うところがある。そこから協会のマーケティングの残念さを感じる。以下詳しく述べていく。

 

巡業の二面性

地方巡業は地域貢献・地方ファンサといった一面がある。

 

おらが町にお相撲さんが来る!という高揚感は好きだ。ご当地力士を応援する地元の人の熱気も好きだ。協会は3.11以降、相撲の存続、ファンからの理解を得るため巡業を増やしたのだと思う。地域貢献運動は素晴らしいことだと思う。

 

話が複雑なのは、地方巡業が新規ファン開拓といった側面も有しているからだ。

 

協会公式twitterと巡業

ここ数年の「相撲ブーム」は遠藤などのイケメン力士の台頭、宇良など新星の登場、稀勢の里横綱昇進など様々な要因が背景にはある。しかし相撲協会公式twitterを抜きにしては語れないと思う。


キュートでチャーミングな力士の一面を切り取ったツイートは話題になった。そして「千代丸たん」の寝姿など巡業のオフショットがバズを生んだ。相撲ファンのアカウントは増えていった。ファンも巡業の様子を投稿し、ファンがファンを呼んだ。


SNSを使いこなす若手・新規ファンも、地元のおばちゃん・おじちゃんも、巡業ではTVで見るお相撲さんを間近で見れる。言うなれば接触現場なのだ。しかも写真取り放題だもんね。

 

巡業マナーの課題

ただ接触現場として巡業が整備されてるとは言い難い。握手会でサインを頼み列が……なんて話も聞く。こういうことに一々ルール!と叫ぶのも野暮だと分かっているが。


力士が来ればサインや写真を求める人の波がどっと押し寄せる。マゲ結ってる=TVのお相撲さんだ!と早とちりした人から、幕下力士が写真を頼まれることも。心なしか誇らしげに収まる風景は微笑ましくもある。


ただ、ライトな観客が追いかけまわし、警備の人が必死で押さえるのも事実ではある。


全ての観客がコアな相撲ファンであれとは言わない。それはムリだ。ライトなファンにも、地元のじぃじ、ばぁば、おじさん、おばちゃん、ちびっこにもやさしい巡業であってほしい。「幕内・十両力士の顔と名前が一致する奴だけ巡業行け!」だったら相撲ファン層は先細りしてしまう。


ただ、あまりにも力士への配慮が足りていないか。彼らをまるでインスタ映えするスイーツのように扱っていないか。ただの話のタネにしていないか。


私がこのような話をするのは、天風関の「事件」があったからだ。

matome.naver.jp

 

天風「関取の命」汚され涙と怒り、ファンも分別を - 大相撲裏話 - 相撲・格闘技コラム : 日刊スポーツ

 

天風関はエンターテイナーで、とってもチャーミングな力士だ。巡業でもお客さんと気さくに話す*1。バラエティに出たら必ず笑いを取ろうとする無邪気な一面もある*2。そんな彼がとっても気を使って書いたのがひしひしと伝わるツイートだ。この関取は、色んな人の立場に立ってものを考えられる、人を思いやれる「気は優しくて力持ち」なお相撲さんなのだなと感じた。

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同時に相撲協会に失望したのも事実だ。きっかけはこのツイート。

 

ファンが、少なくとも私が求めているのは「マジックおなかについて落ち込んじゃった天風くん😞」じゃない。力士を守ってほしかった。天風関が、あのようなツイートをしなくて済む状況にしてほしかった。ニッカンの記者が、なぜ記事を書いたのか、分からないのだろうか。

 

需要と供給の不一致

 話が噛み合わないのだ。全く。(少なくとも私のTLに多い)ファンの要望と、協会のサービスが。新規ファン開拓・既存ファンにも楽しんでもらえるため「力士のお茶目なひとこま」を提供しているのだろう。接触イベ・巡業を多くの場所で行っているのだろう。しかし肝心の力士はどうか?肝心の本場所の土俵は?「土俵の充実」は?


茶目っ気溢れる力士のひとこまは好きだ。私もそういう写真をふぁぼるし、自分で撮れたらしめしめと思ってツイートする。ただ、新規ファンばかり目が行って、マナー等のファン・観客へのの啓蒙がおろそかになっていないかとも思うのだ。事実、友人は初めて巡業に行く際右も左も分からなかったと語っていた。twitterで心あるファンに教えてもらったからよかったけど、協会はガイドを提供していないと。


さらに、巡業に力を入れて肝心の力士が本場所で力を出せないという本末転倒な事態になっている。移動含め巡業はハードだ。ケガを直したい、ゆっくり鍛錬したい力士もいるだろう。事実、白鵬は力士会会長として巡業の改善を求めている。首都圏で一県に何回もやっていると、さすがにそこまでやる必要あるか?と思ってしまう。


「ファン拡大」のため巡業に力士を繰り出し、肝心の本場所で力士がケガでいない。興行の目玉コンテンツとなる力士を、肝心の時に出せない状態でいる。本末転倒以外の何物でもない。ケガなどで力士が元気がないと、相撲の迫力が落ちる。客も元気をなくす。「○○関おらんしこのチケット紙屑だわ」なノリも嫌いだが。どの力士も頑張っている。


新規ファン拡大偏重・巡業過多などの誤った「お客様第一主義」相撲協会は直してほしい。力士が守られ、充実した本場所の土俵でファン・観客に還元してほしい。こちらも声を上げるので、力士やファンの声に耳を傾け、コミュニケーションをとってほしい。そうしてファン・力士・協会のコミュニケーション不全が収まることを祈っている。何より力士が充実した相撲人生が送れることを。

*1:ちなみにわたしの中で二大・巡業で株爆上がり力士は天風関と朝赤龍a.k.a.錦島親方。いまは亡き時天空関も捨てがたい

*2:そして兄弟子の嘉風豪風にツッコまれるのがお約束